- 2011-06-29 (Wed) 02:22
- ユーレカの日々
えらいものが始まってしまった。そう、デアゴスティーニの隔週刊「ジェリー・アンダーソンSF特撮DVDコレクション」全54巻、創刊号は特別価格790円、である。
イギリスのプロデューサー、ジェリー・アンダーソンの制作した、「サンダーバード」「キャプテン・スカーレット」「謎の円盤UFO」「スティングレー」「ジョー90」の5つのシリーズが隔週でリリースされてしまうのだ。
1961年生まれのわたしにとって、サンダーバードはまさにSF、トクサツ、メカアクションの原体験だ。小学生時代はサンダーバードプラモデルが爆発的なブームで、いくつも作った覚えがある。アンダーソンの作品はいくつもあるが、やはり人気はサンダーバードで今までも何度となくリバイバルブームがあった。
数年前から「キャラクターAge」という、そのあたり専門の、しかもわたしら高年齢対象(活字がでかい〈笑〉)のプラモデル雑誌がすでに5号も刊行されていたりして、つくづくこの世代は業が深いと思い知らされる。
学習研究社
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サンダーバードのストーリーとドラマの演出は、人形劇という制限(人同士の接触アクション、殴り合いや抱擁ができない)から、今見るとかなりテンポがゆっくりしていてかったるいが、「トクサツ」の方は惚れ惚れするような空気感、重量感と、ワクワクする演出が詰まっていて、古さを感じさせない。それを実現しているのが、数々のギミックアイデアとその見せ方、そしてデザインだろう。
とにかく人形は細かい演技はできないから、メカの方を動かす。その結果様々な自動メカが未来感を醸しだす、というのがジェリー・アンダーソンの魅力。あらゆる場面で自動装置のギミックが満載で、それに子どものころのぼくらは目を輝かして未来を夢見ていた。
今でもiPhoneやデジタルガジェット、変形モノ、多関節モノにハート鷲掴みにされちゃうのは、間違いなくサンダーバードの原体験のせいだと思う。
サンダーバードでみんな大好きだったのが、「発進シークエンス」。レスキューメカが秘密基地から発進する手順の描写だ。司令室のラウンジから、ソファーや写真パネルが移動したりどんでん返しになって、パイロットが搬送され、それぞれのビークルに乗り込む。ビークルもまた、格納庫から発射地点まで搬送され、秘密のハッチが開き、一瞬の静けさのあと、轟音とともに飛び立つ。
プロデューサーのジェリー・アンダーソンはじめ、スタッフにもイギリス空軍体験者が多かったらしく、その経験から演出したと言われているが、その影響は特に日本において多大で、その後のウルトラセブン、近年ではエヴァンゲリオンなども、手順、手順のオンパレードだ。
これに対し、アメリカ映画はそのあたりは全般的に淡白。スターウォーズ4のデススター攻略発進シーンも、スタッフがバタバタ走り回っている程度で、サンダーバード的な大仕掛は見せてくれない。アメリカ映画でそのあたりの演出が見事だったのはエイリアン2くらいだろうか。
もう一つの魅力は、そのギミック満載のメカニックや建物のデザインだ。全体のシンプルさと、意味ありげなディテールの組み合わせは今見ても説得力満点。特に背景の建物やちょっとしたメカニックのデザインは、今の目で見ればアナログ時代であるがゆえに不必要に大きかったりするものの、存在感とリアリティのある、いいデザインが多い。
それに対して、主役のメカニックたちは子ども番組ということで、どうしてもオモチャっぽいハデさが目に付く。このオモチャっぽさとリアリティのバランスが、長い間愛され続ける理由のひとつなのだろう。
あまりにリアルな「正解」にしてしまうと、どうもこういったSFモノはつまらなくなってしまう。最初のガンダムやSTARWARSメカもそうなのだが、見た人が「いや、もっと正解があるはず」とツッコミを入れる余地を残しておくことが、実はとても重要なのだと思う。
ただ、サンダーバードのレスキューメカ、1号から5号のデザインはそういったユルさやオモチャっぽさだけでは説明できない、なんとも奇妙なデザインだと、昔から疑問だった。
その代表格が4号。4号は水中作業メカ、潜水艦なのだが、そのすがたはブルドーザーに垂直尾翼をつけたようなデザイン。全体に箱型で抵抗も多そう&水圧に弱そうで、だれがどう見ても、水中で活動するメカには見えない。
1号のデザインも妙だ。たしかにジェット戦闘機にはロケット型のボディに短い翼をつけたようなものがあるにはあるが、空気抵抗ありまくりな無骨なエンジンも、可変翼もどうも妙だ。
いろんな書籍雑誌を見てもそういう「デザインの理由、解説」について触れているものを見たことがなく、子どもの頃からほんの数年前まで、ずーっとそれが謎だったのだが(そうなんです、そういうことがずーっと気になってる性分なんです)、5年ほど前にふと解ってしまった。
きっかけは、大学の複数あるパソコンが見分けがつかないので、大きく数字をペイントしたらいいんじゃないか、それってサンダーバードっぽいなぁと考えていた時のこと。
まるでダ・ビンチ・コードのラングドン教授のように、頭の中に隠されたイコンの映像がひらめいたのだ(笑)。答えはそれぞれのボディに大書きされていた。オープニングで堂々と明かされていた。サンダーバードの5つの乗り物のデザインは、「アラビア数字」がモチーフになっているのだ。
まず単純なところで、2号と4号。数字の2を反時計回りに、4を時計回りに90度回転させると、それぞれ、2号、4号の横から見たシルエットだ。5号の5は上からみたところで、ドーナツから箱が飛び出しているシルエット。1号は翼をたためば1だ(そのための可変翼なのだ!)。
3号は、ロケットエンジンと本体を結ぶビーム部分を倒してみたシルエットになる。これは少々こじつけのように思えるが、3号のデザインをよく見てみると、ボディのTHUNDERBIRDという表記に対して3という数字の向きが、この機体だけ90度回転させて描かれており、ボディのシルエットに対応させているのがわかる。気づいてしまえば疑う余地もない。オープニング映像を見れば納得。
<http://www.youtube.com/watch?v=jAA3-80dwnk>
それぞれのデザインのディテールや、アレンジが絶妙なのでずーっと気がつかなかったのだが、明らかにそれぞれの主役メカとナンバーの関連を印象づけるためのデザイン。不要に思えるデザインも、数字のシルエットを形作るために必要だったのだ。
結局、リアリティも理屈も、実は味付け、枝葉にすぎないんじゃないかと思う。奇をてらってもダメで、見る人の潜在意識にあるもの、見たことあるもの、そういったものをうまく利用してやらないとデザインというのは印象に残らないのだ。
STARWARSでも奇妙なデザインのメカが多いが、そのほとんどは動物をモチーフにしたデザインであり、それが不気味さや精悍さを表現している(たとえば、ボバ・フェットの乗るスレイブ1は象の頭)。
要は抽象的になってはダメで、人間というのはつくづく、身体感覚が重要なんだなぁと思うのだ。昨今、派手なSF映画は山のようにあるけれど、あまり印象に残る「かっこええ〜〜」メカが少なくなっている気がするのは、このあたりに問題があるように思える。まだまだ方法論はあるはず。サンダーバードのように、50年近く通用するデザインを見てみたい。
【日刊デジタルクリエイターズ】 No.3074掲載 2011/06/29
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